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「働き盛りの約4割がフレイルもしくはフレイル予備軍の可能性もある」とフレイル研究の第一人者、早稲田大学教授の宮地元彦先生。ステイホーム期間が長かった新型コロナ禍を経て、多くの人で、筋力や心身の活力が低下した状態であるフレイルのリスクが高まっている恐れがあるのです。将来の要介護を避けるために、今、私たちがすべきことは何か。
簡単なフレイルチェック法、最大の栄養面のリスクであるたんぱく質不足を避けるための食事法、今日から始められる効果的な身体活動のコツ…。
宮地先生が、だれにでも実践できるフレイル対策を3回にわけてわかりやすく解説します!

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防①
【フレイルと食事の関係①】

フレイルの該当率や発症に関わる最大の栄養的問題はたんぱく質不足。多彩な食事を食べている人ほどたんぱく質摂取量が多い傾向があるため、自分が一品ものばかり食べていないかチェックすることもポイントです。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防②
【フレイルと食事の関係②】

多忙で朝食を欠食するなど、規則正しく3食食べられていないのはたんぱく質不足の典型的要因です。足りない分を補える、手軽で効率的なたんぱく源を知ることが大事。1日20品目以上の摂取を心がけると、必要な量のたんぱく質がとれるという研究もあります。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防③
【たんぱく質摂取量の目標量と推奨量】

たんぱく質摂取量は、不足しない量の基準である“推奨量”よりも、フレイルを含めた将来の健康問題を予防する上で目指すべき量である“目標量”を指標にするのがおすすめです。身体活動レベル別に数値が定められています。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防④
【たんぱく質摂取量を目標量へ達するには】

目標量を達成するには、牛乳1杯や卵1個などの一品を加え、5~10gのたんぱく質をプラスする意識をもちましょう。毎食が難しい場合は、たんぱく質が欠乏している状態である朝にこうした食品を追加するのが効果的です。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防⑤
【たんぱく質と筋肉量】

運動をしているかいないかにかかわらず、たんぱく質摂取量の増加に比例して筋肉量も増えることが宮地先生の研究で明らかになっています。今の食事に自分の体重(㎏)×0.1g分のたんぱく質をプラスするだけでも効果あり。まず2,3ヶ月続けてみましょう。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防⑥
【たんぱく質とからだづくり】

筋肉だけでなく、たんぱく質は体のあらゆる組織の材料。例えば、たんぱく質を補うことは脳の萎縮を予防する上でも大切です。他にも、歯ぐきの健康や噛む力など食べる力もたんぱく質が元になっているので、しっかり補わないと思わぬところが衰えます。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防⑦
【たんぱく質を活かす要素】

たんぱく質とカルシウムを一緒にとることは骨の強化のために重要。また、ビタミンDがないと筋肉が作られにくくなります。ビタミンDは日光を浴びると生成されるので、外出して運動や社会活動を。一方、たんぱく質を意識するあまり野菜の摂取量が少なくならないよう気を付けて。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防⑧
【たんぱく質を摂るタイミング】

たんぱく質を摂るのは運動の前と後、どちらがいい?宮地先生は、筋肉を作るためにたんぱく質をとりこもうとする働きが活性化する“運動後”がおすすめだと言います。お腹が満たされた状態での運動はきつく感じたり、消化や吸収が悪くなるという面も挙げられるとのこと。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防⑨
【フレイル予防と運動】

座っている時間の長さ(座位行動)が長いほど、フレイルだけでなく総死亡や生活習慣病のリスクが高まることが研究で明らかになっています。身体活動が増えるとこれらのリスクは下がるため、少しでも座っている時間を減らして歩行や運動に切り替えるようにしましょう。

たんぱく質摂取と運動でフレイル予防⑩
【フレイル予防に効果的な運動】

フレイル予防に最も効果的な運動は筋力トレーニングですが、週2,3回、1日5〜10分程度の軽い筋トレでも効果が期待できます。筋トレでなくても、自分ができる運動をやってみることから始めましょう。

PROFILE

早稲田大学スポーツ科学学術院 スポーツ科学部教授 宮地元彦 プロフィール画像
早稲田大学スポーツ科学学術院 スポーツ科学部教授

宮地元彦みやち・もとひこ

1965年、愛知県生まれ。88年、鹿屋体育大学体育学部スポーツ体育課程卒業。90年、同大学大学院体育学研究科修士課程修了。99年、筑波大学博士(体育科学)。川崎医療福祉大学助教授、米国コロラド大学客員研究員、国立健康・栄養研究所身体活動研究部部長などを経て、2021年から現職。日本学術会議会員。厚生労働省の『健康づくりのための身体活動基準2013』『健康日本21(第2次)』の策定などにも関わる。

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